have

have は、証明の途中でわかったことを補題としてローカルコンテキストに追加するタクティクです。

have h : P := ...P という命題の証明を構成し、その証明に h という名前を付けることができます。

/-- 3重否定の簡略化 -/
example (P : Prop) : ¬¬¬ P → ¬ P := by
  intro hn3p hp

  -- ここで`¬¬ P`が成り立つ。
  have hn2p : ¬¬ P := by
    -- なぜなら、`¬ P`であると仮定したとき
    intro hnp
    -- 仮定の`P`と矛盾するから
    contradiction

  -- これで`¬¬¬ P`と`¬¬ P`が得られたが、これは矛盾である
  contradiction

have で示した補題には必ず名前がつきます。名前を省略して have : P := ... とすると、自動的に this という名前になります。無名の補題が欲しい場合、代わりに show .. from 構文を検討してみてください。

example (P : Prop) : ¬¬¬ P → ¬ P := by
  intro hn3p hp

  -- 名前をつけないと…
  have : ¬¬ P := by
    intro hnp
    contradiction

  -- `this : ¬¬ P`という仮定が得られている
  guard_hyp this : ¬¬ P

  contradiction

また have で同じ名前を2回宣言すると、古い方はアクセス不能になってしまいます。ローカルコンテキストの補題の置き換えを行いたいときは、代わりに replace を使用してください。

無名コンストラクタ

P の証明 hp : PQ の証明 hq : Q があるとき、P ∧ Q の証明は And.intro hp hq で構成できます。ここで And.intro は構造体 And 型のコンストラクタです。

これを、コンストラクタ名を明示せずにシンプルに ⟨hp, hq⟩ と書くことができます。これは無名コンストラクタと呼ばれるものです。

section
  variable (P Q : Prop) (hp : P) (hq : Q)

  def hpq : P ∧ Q := ⟨hp, hq⟩
  def hpq' : P ∧ Q := And.intro hp hq
end

無名コンストラクタを利用することで、記述を簡略化できます。

論理積 ∧

次のように、P ∧ Q という命題から PQ を取り出すことができます。

example (P Q : Prop) (hPQ : P ∧ Q) : P := by
  -- `P ∧ Q` という仮定を分解する
  -- `hQ : Q` は不要なのでアンダースコアに置き換える
  have ⟨ hP, _ ⟩ := hPQ

  assumption

存在 ∃

次のように、∃ x : X, P x という命題から、条件を満たす x を取り出すことができます。x : Xhx : P x がローカルコンテキストに追加されます。

-- `x` が偶数のとき `3 * x` も偶数
example (x : ℕ) (hx : ∃ y, x = 2 * y) : ∃ z, 3 * x = 2 * z := by
  -- `hx` で存在が主張されている `y` と、
  -- `x = 2 * y` という命題を得る
  have ⟨y, hy⟩ := hx
  exists 3 * y
  rw [hy]
  ring