syntax

syntax コマンドは新しい構文を定義することができます。

import Lean

open Lean Parser

/-- `s : String` をパースして `Syntax` の項を得る。`cat` は構文カテゴリ。-/
def parse (cat : Name) (s : String) : MetaM Syntax := do
  ofExcept <| runParserCategory (← getEnv) cat s

-- 最初は `#greet` などというコマンドは定義されていないので
-- そもそも Lean の合法な構文として認められない。
/-- error: <input>:1:0: expected command -/
#guard_msgs (error) in
  #eval parse `command "#greet"

-- `#greet` というコマンドのための構文を定義
syntax "#greet" : command

-- `#greet` というコマンドが Lean に認識されるようになった。
-- エラーメッセージは、`#greet` コマンドの解釈方法がないと言っている。
/-- error: elaboration function for '«command#greet»' has not been implemented -/
#guard_msgs in #greet

Lean に構文を認識させるだけでなく、解釈させるには macro_rules などの別のコマンドが必要です。

-- `#greet` コマンドの解釈方法を定める
macro_rules
  | `(command| #greet) => `(#eval "Hello, Lean!")

パース優先順位

syntax コマンドは Lean に新しい構文解析ルールを追加するので、既存の構文と衝突して意図通りに解釈されないことがあります。

/-- `a = b as T` という構文を定義 -/
local syntax term " = " term " as " term : term

/-- `a = b as T` という構文を、型 `T` 上で `a = b` が成り立つと解釈させる -/
local macro_rules
  | `(term| $a = $b as $c) => `(@Eq (α := $c) $a $b)

-- メタ変数の番号を表示しない
set_option pp.mvars false

-- `Nat` と `Prop` を足すことはできないというエラーメッセージ。
-- `1 + (1 = 2)` だと認識されてしまっているようだ。
/--
warning: failed to synthesize
  HAdd Nat Prop ?_
Additional diagnostic information may be available
using the `set_option diagnostics true` command.
-/
#guard_msgs (warning) in
  #check_failure (1 + 1 = 2 as Nat)

パース優先順位(parsing precedence)を設定することで、どの構文から順に解釈されるかを指定することができ、問題を修正できることがあります。このあたりは notation コマンドと同様です。

-- 十分低いパース優先順位を設定する
local syntax:10 term:10 " = " term:10 " as " term:10 : term

local macro_rules
  | `(term| $a = $b as $c) => `(@Eq (α := $c) $a $b)

-- 意図通りに構文解析が通るようになる
#guard (1 + 1 = 2 as Nat)

#guard (3 - 5 + 4 = 2 as Int)

name 構文

(name := ...) という構文により、名前を付けることができます。名前を付けると、その名前で Lean.ParserDescr の項が生成されます。

-- `#hoge` というコマンドを定義する
-- `name` 構文で名前を付けることができる
syntax (name := hogeCmd) "#hoge" : command

-- 構文に対して付けた名前で、ParserDescr 型の項が生成されている
#check (hogeCmd : ParserDescr)