マクロ
マクロとは
Lean においてのマクロとは Syntax → MacroM Syntax
である関数のことです。MacroM
はマクロのためのモナドで、次節で説明する静的な保証をマクロに持たせることができますが、現時点ではおおむね無視しても構いません。
マクロの登録は macro
属性を使用して、特定の構文宣言のハンドラとすることで行われます。コンパイラはこうして入力されたものに対して実際の解析を行う前に、これらの関数に構文の適用を行ってくれます。したがって利用者がすべきことは構文を特定の名前で宣言し、 Lean.Macro
型の関数をそれにバインドするだけです。Syntax
の章の LXOR
記法を再現してみましょう:
import Lean
open Lean
syntax:10 (name := lxor) term:10 " LXOR " term:11 : term
@[macro lxor] def lxorImpl : Macro
| `($l:term LXOR $r:term) => `(!$l && $r) -- we can use the quotation mechanism to create `Syntax` in macros
| _ => Macro.throwUnsupported
#eval true LXOR true -- false
#eval true LXOR false -- false
#eval false LXOR true -- true
#eval false LXOR false -- false
とても簡単です!マクロが Macro.throwUnsupported
関数を使用すると、「この構文が管理されていないようである」ことを示すことができます。今回の場合、単に絶対に到達しないワイルドカードのパターンを埋めるために使用されています。
しかし、実はその気になれば同じ構文に対して複数のマクロを登録することも可能であり、その場合は各マクロが次々に試行されます(後に登録されたものほど優先度が高くなります。この「高さ」は正しい?)。この試行は、どれかが Macro.throwError
を使用して実際のエラー、つまり Macro.throwUnsupported
によるもの以外を投げるか成功するまで続けられます。
@[macro lxor] def lxorImpl2 : Macro
-- 左右の識別子が特定の場合のケースの挙動を変更するための特殊ケース
| `(true LXOR true) => `(true)
| _ => Macro.throwUnsupported
#eval true LXOR true -- true, handled by new macro
#eval true LXOR false -- false, still handled by the old
この機能は明らかに あまりにも 強力です!これは後でコードを追加した際に奇妙な挙動を引き起こす可能性があるため、軽い気持ちで使ってはならず、慎重に考えるべきです。次の例は、この奇妙な挙動を示しています:
#eval true LXOR true -- true, handled by new macro
def foo := true
#eval foo LXOR foo -- false, handled by old macro, after all the identifiers have a different name
このマクロがどのように実装されているかを正確に知らなければ、この動作に基づいて問題をデバッグする人は非常に混乱するでしょう。マクロの使用とエラボレーションのような他のメカニズムの使用の使い分けの経験則として、上記の2番目のマクロのように実際のロジックを構築する場合はマクロではなくエラボレータを使用することをお勧めします(エラボレーションの章で説明します)。つまり理想的にはマクロは、人間が手でも簡単に書き出せるがあまりにもめんどくさいような構文から構文へのシンプルな変換のために用いたいのです。
簡略化されたマクロ宣言
ここまででマクロとは何か、マクロを登録する方法などの基本がわかったところで、もう少し自動化された方法を見てみましょう(実は、これから紹介する方法はすべてマクロとして実装されています)。
まず最初に macro_rules
というものがあり、これは基本的に、例えば上記で書いたような関数に脱糖します:
syntax:10 term:10 " RXOR " term:11 : term
macro_rules
| `($l:term RXOR $r:term) => `($l && !$r)
見てわかる通り、これはさまざまなことをかわりに行ってくれます:
- 構文宣言の名前
macro
属性の登録throwUnsupported
ワイルドカード
これを除けば、この構文はまさにパターンマッチ構文を使った関数のように動作し、理論的には右手側に任意の複雑なマクロ関数をエンコードすることができます。
これでもまだ十分短くないと感じたのなら、macro
を使ったさらなるステップを見てみましょう:
macro l:term:10 " ⊕ " r:term:11 : term => `((!$l && $r) || ($l && !$r))
#eval true ⊕ true -- false
#eval true ⊕ false -- true
#eval false ⊕ true -- true
#eval false ⊕ false -- false
見ての通り、macro
は notation
にもうかなり近くなっています:
- 構文宣言を代行してくれます
- 自動的に
macro_rules
スタイルの関数を書いてくれます
もちろん違いもあります:
notation
はterm
の構文カテゴリに限定されますnotation
は右側に任意のマクロコードを書くことができません
Syntax
Quotations
基本
今までは `(foo $bar)
という構文を使って Syntax
オブジェクトの作成とマッチを行ってきました。構文に関わる非自明なことに本質的に必要であるため、今こそ完全な説明を行います。
まず最初に、`()
という構文を Syntax
quotation と呼びます。syntax quotation の中に変数を入れると `($x)
となり、この $x
の部分を anti-quotation と呼びます。このように x
を挿入する場合、x
は TSyntax y
型であることが求められます。ここで y
は何かしらの構文カテゴリのとある Name
です。Lean コンパイラは賢いため、ここで使用が許可されている構文カテゴリを把握することができます。そのため、以下のようなエラーが発生することがあります:
application type mismatch
x.raw
argument
x
has type
TSyntax `a : Type
but is expected to have type
TSyntax `b : Type
もし a
構文カテゴリにあるものが b
構文として使えると確認していれば、次のような形で強制を宣言することができます:
instance : Coe (TSyntax `a) (TSyntax `b) where
coe s := ⟨s.raw⟩
これによって Lean は自動的に型キャストを行うことができます。もし a
が b
の代わりに使えないことに気づいたなら、おめでとうございます、読者は自身の Syntax
関数のバグを発見しました。Lean コンパイラと同様に、特定の TSyntax
型に特化した関数を宣言することもできます。例えば構文の章で見たように次のような関数があります:
#check TSyntax.getNat -- TSyntax.getNat : TSyntax numLitKind → Nat
この関数が受け取る Syntax
は数値リテラルであり、当然 Nat
に変換できることがわかっているため、これはパニックしないことが保証されています。
パターンマッチで anti-quotation 構文を使うと、構文の章で説明したように、TSyntax y
型の変数 x
が得られます。ここで y
はパターンマッチに合致した構文カテゴリの Name
です。何らかの理由で $x
というリテラルを Syntax
に挿入したい場合、例えばマクロを作成する場合、anti-quotation を使ってエスケープすることができます: `($$x)
。
もし x
が解釈される構文の種類を指定したい場合は、次のようにして明示的に指定することができます:`($x:term)
。ここで term
は他の有効な構文カテゴリ(例えば command
)やパーサ(例えば ident
)に置き換えることができます。
ここまではすでに構文の章やこの章までに見てきた直観的な内容をより形式的に説明したにすぎません。次はより高度な anti-quotation について説明しましょう。
より高度な anti-quotation
便宜上、書式文字列と同じような方法で anti-quotations を使うこともできます:`($(mkIdent `c))
は次と同じです:let x := mkIdent `c; `($x)
。
さらに、いくつかのシチュエーションでは、基本的な Syntax
ではなくより複雑なデータ構造に包まれた Syntax
、とりわけ多いのが Array (TSyntax c)
や TSepArray c s
などを扱います。ここで TSepArray c s
は Syntax
固有の型であり、区切り文字 s
を使って c
というカテゴリを区切る Syntax
をパターンマッチした場合に得られるものです。例えば、$xs,*
を使ってマッチをした場合、xs
は TSepArray c ","
という型になります。区切り文字を指定せずに(つまり空白で)マッチする特殊なケース $xs*
では Array (TSyntax c)
となります。
xs : Array (TSyntax c)
を扱い、それを quotation に挿入したい場合、主に2つの方法があります:
- 区切り文字を使用して挿入する。最も一般的なのは
,
を使って`($xs,*)
とします。これはTSepArray c ",""
の挿入の仕方でもあります。 - 区切り文字無しで空白を挿入する。(TODO):
`()
例えば:
-- 可能な場合にタプルの最初の要素を構文的に削除する
syntax "cut_tuple " "(" term ", " term,+ ")" : term
macro_rules
-- タプルにならないため、ペアの片方の要素を削除することは不可能
| `(cut_tuple ($x, $y)) => `(($x, $y))
| `(cut_tuple ($x, $y, $xs,*)) => `(($y, $xs,*))
#check cut_tuple (1, 2) -- (1, 2) : Nat × Nat
#check cut_tuple (1, 2, 3) -- (2, 3) : Nat × Nat
本節の最後として、いわゆる「anti-quotation スプライス」を取り上げます。anti-quotation スプライスには2種類あり、まずオプショナルと呼ばれるものから説明します。例えば、オプショナルな引数を持つ構文、独自の let
を宣言する場合を考えます(実際のプロジェクトでは、理論を記述する対象の関数型言語の let
である可能性が高いでしょう):
syntax "mylet " ident (" : " term)? " := " term " in " term : term
オプションの (" : " term)?
引数を指定することで、その左側にある項の型を定義することができます。これまで見てきたメソッドでは、オプションの引数がある場合と無い場合の2つの macro_rules
を書かなければなりませんでした。しかし、その後に行う構文変換はオプションの引数があっても無くても全く同じように動作するため、ここでスプライスをつかって出来ることは、本質的には両方のケースを一度に定義することです:
macro_rules
| `(mylet $x $[: $ty]? := $val in $body) => `(let $x $[: $ty]? := $val; $body)
この $[...]?
部分がここでのスプライスであり、基本的に「もしこの構文のこの部分が無い場合、anti-quotation 変数を含む右側においてこの部分を無視すること」ということを意味します。これで、この構文を型の帰属の有無に関わらず実行できるようになりました:
#eval mylet x := 5 in x - 10 -- 0, due to subtraction behaviour of `Nat`
#eval mylet x : Int := 5 in x - 10 -- -5, after all it is an `Int` now
次と最後のスプライスはPythonなどで見られるリスト内包表記を想起させるかもしれません。ここでは map
をマクロとして実装したものを使って説明します:
-- リストの各要素に対して最後に渡された関数を実行する
syntax "foreach " "[" term,* "]" term : term
macro_rules
| `(foreach [ $[$x:term],* ] $func:term) => `(let f := $func; [ $[f $x],* ])
#eval foreach [1,2,3,4] (Nat.add 2) -- [3, 4, 5, 6]
今回の場合、$[...],*
の部分がスプライスです。マッチする側では、その中に定義したパターンに(与えた区切り文字を考慮しながら)繰り返しマッチしようとします。しかし、正規のセパレータによるマッチとは異なり、Array
や SepArray
を返しません。その代わりに、指定したパターンにマッチされるたびに評価される別のスプライスを右側に書くことができます。この評価は繰り返しのたびにマッチされた特定の値で行われます。
健全性の問題とその解決策
C言語のような他の言語のマクロシステムに慣れている人なら、いわゆるマクロの健全性についてご存じでしょう。健全性の問題とは、マクロが識別子を導入する際に、そのマクロが含む構文の識別子と衝突してしまうことです。例えば:
-- このマクロを適用すると、新しい識別子 `x` を束縛する関数が生成される。
macro "const" e:term : term => `(fun x => $e)
-- しかし `x` はユーザによって別で定義されうる
def x : Nat := 42
-- コンパイラは `$e` においてどちらの `x` を使うべきか?
#eval (const x) 10 -- 42
マクロが構文の変換だけを行うことを考えると、上記の eval
は 42 ではなく 10 を返すと期待できるかもしれません:つまるところ、返される構文は (fun x => x) 10
となるはずだからです。もちろんこれは作者の意図したことではありませんが、C言語のような原始的なマクロシステムではこのようなことが起こります。では、Lean はこのような健全性の問題をどのように回避しているのでしょうか?これについては Beyond Notations という優れた論文で詳しく述べられています。この論文では Lean のアイデアと実装について詳しく論じられています。実用上、詳細はそれほど興味深いものではないので、ここではトピックの概要を述べるにとどまります。Beyond Notations で説明されているアイデアは「マクロスコープ」と呼ばれる概念に集約されます。新しいマクロが呼び出されるたびに新しいマクロスコープ(基本的には一意の番号)が現在アクティブなすべてのマクロスコープのリストに追加されます。現在のマクロが新しい識別子を導入するとき、実際に追加されるのは次の形式の識別子です:
<actual name>._@.(<module_name>.<scopes>)*.<module_name>._hyg.<scopes>
例えば、モジュール名が Init.Data.List.Basic
、名前が foo.bla
、マクロスコープが [2, 5] の場合は以下のようになります:
foo.bla._@.Init.Data.List.Basic._hyg.2.5
マクロスコープは一意な番号であるため、名前の末尾に付加されるマクロスコープのリストはすべてのマクロの呼び出しにおいて常に一意であり、したがって上記のようなマクロの健全性の問題は起こり得ません。
この名前生成になぜマクロスコープ以外のものが含まれているのか不思議に思われるかもしれませんが、これは異なるファイル・モジュールからスコープを組み合わせなければならない場合があるからです。処理されるメインモジュールは常に最も右のものです。このような状況は現在のファイルにインポートされたファイルで生成されたマクロを実行する時に発生する可能性があります。
foo.bla._@.Init.Data.List.Basic.2.1.Init.Lean.Expr_hyg.4
末尾の区切り文字 _hyg
は関数 Lean.Name.hasMacroScopes
のパフォーマンスを向上させるためだけに使用されています。つまりこのフォーマットではこの区切り文字が無くても動作はします。
これには技術的な詳細が多く含まれていました。マクロを使うにあたってはこれらを理解する必要はありません。もし必要であれば、Lean は const
の例のような名前の衝突を許さないということだけを覚えておいてください。
これは syntax quotation で導入される 全て の名前に拡張されます。つまり、`(def foo := 1)
を生成するマクロを書いた場合、foo
は健全性の対象であるためユーザは foo
にアクセスすることができません。幸い、これを回避する方法があります。例えば、`(def $(mkIdent `foo) := 1)
のように mkIdent
を使って生の識別子を生成することができます。この場合、識別子は健全性の管理から外れ、ユーザがアクセスできるようになります。
MonadQuotation
と MonadRef
この健全性のメカニズムの説明に基づくと、1つの興味深い疑問が浮かんできます。現在のマクロスコープがどうなっているかを知る方法はあるでしょうか?結局のところ、上で定義したマクロ関数ではスコープの明示的な受け渡しは一切行われていません。関数型プログラミングではよくあることですが、(マクロスコープなどの)管理する必要のある追加状態を持ち始めると、それらはすぐにモナドで管理されます。このケースでは少々ひねられていますが、同様です。
これを単一のモナド MacroM
だけに実装する代わりに、MonadQuotation
という型クラスを使って、モナド的な方法でマクロスコープを追跡する一般的な概念を抽象化しています。これにより、他のモナドでもこの型クラスを実装するだけでこの健全な Syntax
作成アルゴリズムを簡単に提供できるようになります。
これが `(syntax)
で構文のパターンマッチを使用することができる一方で、純粋関数で同じ構文を持つ Syntax
を作成することができない理由でもあります:純粋関数にはマクロスコープを追跡するための MonadQuotation
を備えた Monad
を持たないためです。
では、MonadQuotation
型クラスを簡単に見てみましょう:
namespace Playground
class MonadRef (m : Type → Type) where
getRef : m Syntax
withRef {α} : Syntax → m α → m α
class MonadQuotation (m : Type → Type) extends MonadRef m where
getCurrMacroScope : m MacroScope
getMainModule : m Name
withFreshMacroScope {α : Type} : m α → m α
end Playground
MonadQuotation
は MonadRef
に基づいているため、まずは MonadRef
を見てみましょう。これのアイデアは非常にシンプルです:MonadRef
は Monad
型クラスを以下の観点で拡張したものです。
getRef
で取得されるSyntax
への参照の利用- あるモナドアクション
m α
をwithRed
を使ってSyntax
への新しい参照で評価できる
MonadRef
単体では対して面白くありませんが、MonadQuotation
と組み合わさることで意味が生まれます。
見ての通り、MonadQuotation
は MonadRef
を拡張し、3つの新しい関数を追加しています:
getCurrMacroScope
は作成された中で最新のMacroScope
を取得します。getMainModule
では(明らかに)メインモジュールの名前を取得します。これは上記で説明した健全な識別子の作成にも使用されます。withFreshMacroScope
は次のマクロスコープを計算し、名前の衝突を避けるためのこの新しいスコープで syntax quotation を行う計算m α
を実行します。これは新しいマクロの呼び出しが発生するたびに内部的に使用されることを意図していますが、例えば構文ブロックを繰り返し生成していて、名前の衝突を避けたい場合など、独自のマクロでこれを使用する意味がある場合もあります。
ここで MonadRef
がどのように関わってくるかというと、Lean は特定の位置でのエラーをユーザに示す方法を必要としています。Syntax
の章では紹介しませんでしたが、Syntax
型の値は実際にファイル内の位置も持ち運ぶことができます。エラーが検出されると、これは通常 Syntax
型の値に束縛され、Lean にファイルのどこでエラーが発生したかを伝えます。withFreshMacroScope
を使って Lean は getRef
の結果の位置を導入された各シンボルに適用し、その結果位置を適用しない場合より良いエラー位置が得られます。
エラー位置の動作を見るために、これを利用する小さなマクロを書いてみましょう:
syntax "error_position" ident : term
macro_rules
| `(error_position all) => Macro.throwError "Ahhh"
-- `%$tk` 構文によって % より前の Syntax が得られる
-- ここでは `error_position` であり、`tk` と名付けられる
| `(error_position%$tk first) => withRef tk (Macro.throwError "Ahhh")
#check_failure error_position all -- the error is indicated at `error_position all`
#check_failure error_position first -- the error is only indicated at `error_position`
このようにエラーの位置をコントロールすることは、良いユーザエクスペリエンスにとって非常に重要であることは明らかでしょう。
ミニプロジェクト
この節の最後のミニプロジェクトとして、構文の章で出てきた算術 DSL を、今回はマクロを使ってもう少し高度な方法で再構築し、実際に Lean の構文に完全に統合できるようにします。
declare_syntax_cat arith
syntax num : arith
syntax arith "-" arith : arith
syntax arith "+" arith : arith
syntax "(" arith ")" : arith
syntax "[Arith|" arith "]" : term
macro_rules
| `([Arith| $x:num]) => `($x)
| `([Arith| $x:arith + $y:arith]) => `([Arith| $x] + [Arith| $y]) -- recursive macros are possible
| `([Arith| $x:arith - $y:arith]) => `([Arith| $x] - [Arith| $y])
| `([Arith| ($x:arith)]) => `([Arith| $x])
#eval [Arith| (12 + 3) - 4] -- 11
ここでも自由に遊んでみてください。変数を使った式のようなより複雑なものを作りたい場合は、マクロを使う代わりに帰納型を作ることを検討してみてください。算術式の項を帰納型にした場合、何らかの形で変数に代入し、その式を評価する関数を書くことができます。また、特別な構文や思いついたものを使って、任意の term
を算術式に埋め込んでみることもできます。
さらなるエラボレートの例
束縛子 2.0
構文の章で約束したように、パワーアップした束縛子を導入しましょう。まず集合論を再び導入することから始めます:
def Set (α : Type u) := α → Prop
def Set.mem (x : α) (X : Set α) : Prop := X x
-- すでに存在する所属の記法用の型クラスに統合
instance : Membership α (Set α) where
mem := Set.mem
def Set.empty : Set α := λ _ => False
-- 「~であるようなすべての要素」という基本的な関数のための記法
def setOf {α : Type} (p : α → Prop) : Set α := p
この節の目標は {x : X | p x}
と {x ∈ X, p x}
の両方の表記を可能にすることです。原理的には2つの方法があります:
- 対象の変数を束縛する方法についての構文とマクロを定義する
Σ
やΠ
などの他の束縛構文でも再利用できるような束縛の構文カテゴリを定義し、{ | }
の場合のマクロを実装する
本節では、再利用が容易なアプローチ 2 を使用します。
declare_syntax_cat binder_construct
syntax "{" binder_construct "|" term "}" : term
さて、本題である2つの束縛子を定義してみましょう:
syntax ident " : " term : binder_construct
syntax ident " ∈ " term : binder_construct
そして最後に構文を拡張するためのマクロです:
macro_rules
| `({ $var:ident : $ty:term | $body:term }) => `(setOf (fun ($var : $ty) => $body))
| `({ $var:ident ∈ $s:term | $body:term }) => `(setOf (fun $var => $var ∈ $s ∧ $body))
-- 以前の例は改良した構文では以下のようになる:
#check { x : Nat | x ≤ 1 } -- setOf fun x => x ≤ 1 : Set Nat
example : 1 ∈ { y : Nat | y ≤ 1 } := by simp[Membership.mem, Set.mem, setOf]
example : 2 ∈ { y : Nat | y ≤ 3 ∧ 1 ≤ y } := by simp[Membership.mem, Set.mem, setOf]
-- 新しい例:
def oneSet : Set Nat := λ x => x = 1
#check { x ∈ oneSet | 10 ≤ x } -- setOf fun x => x ∈ oneSet ∧ 10 ≤ x : Set Nat
example : ∀ x, ¬(x ∈ { y ∈ oneSet | y ≠ 1 }) := by
intro x h
-- h : x ∈ setOf fun y => y ∈ oneSet ∧ y ≠ 1
-- ⊢ False
cases h
-- : x ∈ oneSet
-- : x ≠ 1
contradiction
さらに読む
マクロについてさらに知りたい場合は以下を読むと良いでしょう:
- API のドキュメント:TODO link
- ソースコード:Init.Prelude の前半部分。Lean において構文を構築するためにこれらは重要であるため、これらの宣言はファイル中のかなり初めのほうにあることがわかるでしょう。
- 前述した論文 Beyond Notations